足爪に関して

◎陥入爪、彎曲爪について


『水沢医師会報』2002年10月号掲載より

◎ 陥入爪、彎曲爪について

 患者さんが何科にかかったらいいのか結構迷っているのが爪の疾患です。 幸い私の恩師、西山茂夫先生が爪の病気も得意とされていた関係で“門前の小僧”のように教えて頂いて今随分役に立っています。

 さて、爪に関するトラブルでよく見られるのが爪白癬と彎曲爪、それに伴っての陥入爪の多くは、歩き過ぎたり、靴が合わなかったりで起こってきます。 大抵は過度の運動を避けてもらい、靴を自分の足に合わせて、消毒や抗生剤軟膏の外用をして頂くと良くなってしまいます。 少し治り難くなると抗生剤を内服して様子をみることにしています。

 しかし、さらに難治になって長びき、肉芽も出てくると痛みもさらに強くなって大へんです。 以前はこんな時まず爪甲側縁を切るようにし、必要に応じて液体窒素や硝酸銀で肉芽を処理していました。 いよいよそれでダメなら爪母部分をフェノールで処理する爪郭形成術を行っていました。爪郭形成術では爪母の処理が成否のカギとなりますがフェノール法で幸いに失敗したことはありませんでした。 でも今ではその手術もしなくなってしまいました。 最後に爪郭形成術を行ったのは他院で鬼塚法による爪郭形成術が完全でなくて側縁に小さな爪が出て来たものの再手術で、かれこれ半年前になります。

 それでは今どうしているかですが、患部の爪に特殊な超弾性ワイヤーを挿入することにしています。 ただしワイヤーを挿入するには爪の先端が趾軟部から2mm以上伸びていないとできません。 また、炎症をおこしている時に無理に挿入しようとすると患者は大分痛がります。したがって、まず前述のような保存的療法で炎症をできるだけ抑えて、また同時に爪を伸ばすように指導しています。 この方法によって手術をどうしてもしなければならない患者は今のところいなくなってしまいました。

 弾性ワイヤーによる“爪矯正”の方法は日大の整形外科講師の町田英一先生の考案によるものですが、たまたま彼のことを雑誌で偶然見つけ多少学生時代に面識のあった人だったので早速お願いして教えて頂いたのがキッカケでした。 彼はこの他、形状記憶合金プレートを使う方法も行っていますが、材料にお金がかかり、弾性ワイヤーよりも扱いが面倒で、彼自信も爪が伸びるまでの繋ぎ的に使っていたので採用するのはやめました。 そんな訳で爪はできるだけ切らないようにしています。 ましてや抜爪などは問題外です。 爪は抜いてしまうと抜いた爪以上の爪は生えてきません。 さらに爪を抜くことは患者にとってかなりの苦痛です。 さらには爪が無くなることで歩き方や膝、さらには肩こりといろいろと不調が出てくるようです。

 最後に爪白癬について一言。 今良く用いられる内服薬はラミシールとイトリゾールです。 いずれも販売前の治験段階からのお付き合いで、大学病院時代に友人に無理矢理誘われて「真菌外来」を担当していたからです。 いずれも肝障害が稀にみられ、自分でもそれぞれで経験しました。 使う際には定期的な肝機能チェックを忘れないようにしてください。 また後者は併用禁忌薬剤が多数ありますのでその点も気をつけてください。 当然のことですが爪が白く厚くなっているからと言って爪白癬とは限りませんので・・・・。